2025年10月13日
体感してわかる“構造のチカラ”
住宅フェアで得た貴重な学び
10月11日・12日(長野市)・13日(松本市)の3日間、「住宅フェア」が開催されました。私は長野県建築士事務所協会からの要請を受け、上小支部の代表として12日のみブース運営をお手伝いさせていただきました。
ブースのテーマは「耐震構造をもっと身近に知ってもらう」。実際に木造住宅の構造模型を用い、筋交い(すじかい)がある場合とない場合の強度の違いを体感いただくという体験型展示を行いました。



模型を軽く揺らしていただくと、その差は一目瞭然。筋交いがあるだけで建物の“揺れ方”が大きく変わることに、皆さん驚かれていました。地震国・日本では、この「見えない部分」にこそ家の安全を左右する大切な技術が詰まっています。
■ 屋根材の違いが構造に与える影響
中にはノートを片手に熱心に質問をくださる方もいらっしゃいました。
「瓦屋根とガルバリウム屋根では、構造はどう違うのですか?」
「軽量瓦に替えたら地震に強くなりますか?」など、非常に鋭いご質問です。
私はこうお伝えしました。
屋根が重くなればなるほど、構造もそれに見合った強度が必要になります。
つまり、柱や梁のサイズも大きくなり、コストも上がります。
瓦は確かに耐久性が高く、長い歴史の中で信頼されてきた材料です。しかし重いため、構造に負担をかけることは事実です。
一方、ガルバリウムなどの金属屋根は軽量で、耐震性の面では有利ですが、雨音が響きやすいという面もあります。


また、瓦を葺き替える際の古い瓦の廃棄問題にも触れました。土には還らないため、処分コストが発生します。
しかし、その分雨音を吸収してくれる静かな室内環境が得られるなど、やはり一長一短。
どの素材が正解か――それは住まう方がどんな暮らしを望むかで決まるのです。
■ 体験から得られる気づきと学び
こうして多くの方々と直接お話をしていると、私たち建築の専門家にとっても新しい気づきがあります。
「住まいの安全を守る構造」と「暮らしを彩るデザイン」。この両立をどう考えるか――そこにお客様ご自身の価値観が表れます。


当日は、会場全体がとても賑やかでした。ホワイトリングの外では、薪ストーブメーカーの皆さんが実演を行い、炎のぬくもりを体験できるコーナーも。

家づくりには構造や性能だけでなく、“暮らしを愉しむ”という視点も欠かせないと改めて感じました。
■ 終わりに
住宅フェアでの一日は、まさに「現場こそ学びの場」。
訪れてくださった皆さま、熱心に質問してくださった皆さまに心から感謝申し上げます。
これから家づくりをお考えの方にとって、構造や屋根、素材の選び方が「デザインと同じくらい大切な要素」であることを、少しでも感じていただけたなら幸いです。
これからも、安心で快適な住まいづくりを支えるために、私たちは“学び続ける建築士”でありたいと思います。