HEAD BLOG代表 窪田のブログ

2025年10月17日

家づくりの「正しい順番」

何を重視し、どこに時間とお金をかけるべきか

家づくりは“人生最大のプロジェクト”。
成功のカギは、順番優先順位にあります。ここでは、はじめの一歩から引き渡し後までの標準ルートを、経営者の視点で“実務”として解説します。迷ったらこのページに戻ってきてください。


0. 全体像(12ステップの道順)

  1. 価値観の言語化
    「理想の1日」「5年後・10年後」「絶対にイヤなこと(NG)」を家族で共有し、3~5行に要約。
    成果物:暮らしビジョンA4一枚
  2. 資金計画・予算の枠取り
    住宅ローン返済比率、予備費(総額の5〜10%)、毎月のランニングコスト(光熱・税・保険)を含めた“生涯費用”で考える。
    成果物:ライフプラン試算・資金計画表
  3. 土地の方針決定(同時設計)
    用途地域・建蔽率/容積率・前面道路・上下水・地盤・ハザード。土地だけ先に買わないのが鉄則。
    成果物:候補地の制約シート/役所事前相談メモ
  4. 性能方針の確定
    断熱(UA目標)・気密(C値目標)・耐震(等級3)・一次エネ・太陽光/蓄電の要否。
    成果物:性能ターゲット表(替えにくい外皮に最優先投資)
  5. 間取りコンセプト
    生活動線・収納率・家事時間の短縮・将来の可変性。面積の“引き算”で質を上げる。
    成果物:ゾーニング図/必要室・不要室リスト
  6. パートナー選び(工務店/住宅会社)
    価格の前に思想・実測性能・現場力・アフター。見学会では「体感温度・隙間風・ディテール」を観察。
    成果物:比較チェックシート(後述の評価軸)
  7. 資金調達の事前審査
    固定/変動、ペアローン、団信、補助制度の適用可否。金利上昇耐性をテスト。
    成果物:事前審査承認/金利シナリオ表
  8. 基本設計→概算見積
    仕様とコストの“にらめっこ”。削る順番は内装>設備>外皮の逆ではなく、外皮死守が原則。
    成果物:概算見積・仕様一覧(削減優先順位付き)
  9. 実施設計→入札/見積比較→VE
    同一仕様・同一性能で比較。坪単価の罠(定義が各社違う)に注意、総額で比べる。
    成果物:見積比較表(付帯工事・諸費用・外構・家具家電まで含む)
  10. 契約
    工期・出来高支払い・遅延時の取り決め・設計監理・瑕疵保険・燃料/資材高騰条項を明文化。
    成果物:工事請負契約書/設計監理契約書/保険証書
  11. 着工〜中間検査
    配筋・金物・防水・断熱・**気密測定(C値)**は現場で確認。写真台帳は必須。
    成果物:中間検査合格・気密測定結果・施工写真台帳
  12. 引渡し〜運用
    取説レクチャー、初年度点検計画、家のKPI(室温・湿度・CO₂・月間電気代)で暮らしを見える化。
    成果物:メンテ計画表/省エネ運用ガイド

重視すべきこと(優先順位)

  • ① 外皮と構造(取り返せない所)
    断熱・気密・耐震は“やり直しコスト”が最も高い。ここに投資、設備は後で替えられます。
  • ② 体験の質(毎日効く所)
    採光・通風・音環境・動線・収納。面積ではなく体験の広がり(天井高・窓配置・屋内外の連続性)。
  • ③ ライフサイクルコスト
    光熱+メンテ+保険+税。建築費は初期費にすぎません。
  • ④ レジリエンスと安全
    耐震・火災・水害・停電耐性(非常用電源/蓄電)。
  • ⑤ 流通性(出口)
    「貸せる・売れる」設計と立地。資産としての出口戦略をはじめから。

特に大切にすべき“3本柱”

  1. 価値観の一致(家族×設計×施工)
    担当者の誠実さ・解像度・レスポンス。“人”で8割決まる。
  2. コンパクト設計(引き算の勇気)
    床面積は“必要十分”。**収納率12〜15%**を確保し、動線で家事時間を削減。
  3. 実測性能の確証
    UA値・C値・耐震等級の根拠資料と、実物件の気密測定結果・光熱費実績を確認。

事業者比較の評価軸(7ポイント)

  • 設計思想の一貫性(あなたのビジョンとの整合)
  • 実測性能の開示姿勢(数値+根拠+過去実績)
  • 施工ディテール(取り合い処理・納まりの美しさ)
  • 見積の透明性(仕様明細・抜け漏れ・諸費用)
  • 工期と工程管理(変更管理・意思決定期限の設定)
  • アフター体制(点検計画・駆けつけ文化・地域性)
  • 信用情報(決算・保証・保険・継続性)

よくある落とし穴 → 回避策

  • 土地だけ先買い → 建物同時設計で制約把握・総額最適化
  • 坪単価の比較 → 総額比較(付帯・外構・諸費用・家具家電)で
  • インテリア先行 → 外皮・構造を先に決め、内装は後で調整
  • 借入余力MAX → 予備費5〜10%と“家電・カーテン・引越”枠を先取り
  • 法規・手続き見落とし → 確認申請・性能証明・補助制度は早期に道筋化
  • 現場ノーチェック → 配筋・断熱・気密は立会い/写真台帳で証跡

目安スケジュール(12か月モデル)

  • 0–1か月:ビジョン/資金計画/土地方針
  • 2–3か月:事業者選定/性能方針/基本設計
  • 4–5か月:実施設計/見積・VE/ローン本審査
  • 6か月:契約
  • 7–10か月:着工〜上棟〜仕上
  • 11–12か月:引渡し/運用開始(KPI設定)

※地域・規模で変動しますが、“意思決定の締切(デッドライン)”を各工程で明確に。


見学会・完成物件の“プロ視点チェック”

  • 玄関〜LDKの温度ムラ(夏も冬も)
  • サッシの種類・納まり、床下/小屋裏の断熱処理
  • 機器騒音・配線の整理整頓具合(現場力の鏡)
  • 収納の“取り出しやすさ”と回遊動線
  • 室内のCO₂濃度・湿度の実測例(目標:CO₂1000ppm以下/湿度40–60%)

契約前の最終チェックリスト(抜粋)

  • 価値観シート(理想・将来・NG)がA4一枚にまとまっている
  • UA・C値・耐震等級の目標と根拠が共有されている
  • 総額見積は付帯・外構・諸費用・家具家電まで網羅
  • 工期・支払い・変更管理・遅延時条件が契約書に明記
  • 中間検査・気密測定・写真台帳の実施合意がある
  • アフター点検計画(初年度・3年・5年・10年)が提示済み
  • 出口戦略メモ(貸す/売る想定、査定や賃料の目安)を作成済み

まとめ:順番を守れば、満足は“再現”できる

  1. 価値観を先に決める
  2. 予算は生涯費用で考える
  3. 土地と建物は同時設計
  4. 外皮と構造に最優先投資
  5. 人(伴走者)で選ぶ

この5点を守れば、家づくりは怖くありません。
家は“幸せの器”。面積や見栄ではなく、毎日の体験を基準にしましょう。私たちは、その体験を設計し、数値で裏づけ、現場で叶えます。

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