HEAD BLOG代表 窪田のブログ

2025年9月18日

建築家の四天王の代表格”ライト”①とは…

1) フランク・ロイド・ライト(Frank Lloyd Wright)── 人生と思想の概観

ライト(1867–1959)は「プレーリー様式」や「有機的建築(organic architecture)」を提唱した20世紀を代表する建築家です。建築を「自然と人間の調和」として捉え、水平線を強調する低層で伸びやかなプロポーション、素材の正直さ、室内外の連続性、家具まで含めた総合的なデザインを重視しました。彼の作品と思想は、住宅をはじめ公共建築にも大きな影響を与えました。

2) 日本との関わり・日本での仕事の特徴

ライトは1917年ごろから日本の仕事に関わり、代表作は東京の帝国ホテル(Wright設計、1923竣工)です。帝国ホテルでは「地盤の軟弱地対策(浮き上がるような基礎設計)」「大空間の処理」「大谷石など日本の素材の活用」など、日本の環境・素材を強く意識した設計を行い、1923年の関東大震災で大きく話題になりました(被害が少なかった点は当時の評価を高めたが、後年の沈下など問題も指摘されています)。帝国ホテル本体は1968年に解体されましたが、エントランス・ロビー部分は明治村(愛知県)に移築復元され、見学可能です。

もう一つ現存して見学できる重要作例が、自由学園明日館(Jiyū Gakuen Myonichikan)(東京・池袋)。これはライトが設計し、日本側の協働者・助手(後述)と仕上げた建物で、国の重要文化財に指定され、公開・見学やイベント利用が可能です。ライトは日本の美術や工芸に強い影響を受け、それを自身の設計に取り込んでいきました。

3) 日本に残る(見学できる)ライトの主な建築物・遺構

  • 帝国ホテル(旧本館):本体は解体されたが、エントランス/ロビーは明治村に復元・公開。帝国ホテル側でも関連展示や「Wright Suite」企画が行われることがある。
  • 自由学園明日館(東京・池袋):ライト設計・助手は遠藤新(Arata Endo)。重要文化財で内部見学・ツアーがある。
  • ヨドコウ迎賓館(YODOKO Guest House、旧山邑邸/兵庫・芦屋):ライトが設計し、現地で保存・公開されている(補修の歴史あり)。

(注:日本でライトが設計・関わったプロジェクトは限られ、完成・現存するものはさらに少数です。帝国ホテルの解体や戦災などで失われた仕事も多いです。)

4) 日本への“教え”・影響の中身(要点)

ライトは日本の伝統工芸・民藝、美術(版画や茶道具など)の精神を高く評価し、それらが「素材感」「人間的スケール」「職人技」「自然との一体感」といった建築の基本に深く結びついていると見なしました。具体的には:

  • 建築を自然と調和させる(サイトに応じた水平性や視線のコントロール)。
  • 素材(石・木・タイル等)を正直に見せ、細部のディテールと家具デザインまで一貫して整えること。
  • 建築を“生活の器”として捉え、空間の連続性や居心地(human scale)を重視すること。

これらの思想は、その後日本で活躍した設計者たち(直接・間接にライトに接した人物)を通じて日本の近代建築の発展に寄与しました。

Top