HEAD BLOG代表 窪田のブログ
2025年4月9日
大きな家&小さな家設計難易度は?
住宅の間取りをプロ(建築家や設計士)が考える際、大きな家と小さな家では、設計の難易度や求められるスキルが異なります。それぞれの難しさと理由を詳しく解説します。
1. 大きな家の設計の難しさ
大きな家(たとえば50坪以上の住宅)は、面積の余裕がある一方で、全体の整合性や動線、快適性を確保する難しさがあります。
(1) 動線計画の複雑さ
- 家族の動線(家事動線、来客動線、プライベート動線)を明確に分ける必要がある。
- 例えば、キッチン・ダイニング・リビングのつながりをスムーズにしながらも、パントリーや家事室への動線を考慮するなど、選択肢が多いため設計の難易度が上がる。
- 玄関から客間を通さずにプライベートエリアに行けるか、浴室やトイレの配置など、動線が長くなる分、無駄なく整理するのが難しい。
(2) 空間のバランスとゾーニング
- 大きな家では部屋数が多くなり、「どこにどの部屋を配置するか」 がより重要になる。
- 家族の成長やライフスタイルの変化を見据え、フレキシブルな使い方ができる設計が求められる。
- 例えば、子どもが独立した後の使い方を考え、将来的に2世帯住宅や賃貸併用住宅に改修しやすい間取りにする、などの視点も必要。
(3) 構造・設備の調整
- 広い家では梁や柱のスパン(間隔)が大きくなるため、構造的な検討が難しくなる。
- 断熱や換気のバランスをとるため、空調設備や床暖房の配置を緻密に設計しないと、快適性や省エネ性が損なわれる。
- 吹き抜けや大開口をつくる場合、耐震・耐風性の考慮も重要。
(4) デザインの統一感
- 50坪以上の家になると、LDK、寝室、書斎、客間、和室、収納など多くのスペースができるため、内装デザインの統一感を維持しながら、各部屋の個性を出す難しさがある。
- 各部屋の照明計画や視線の抜け感、天井の高さの変化などを意識しないと、広さがある分「間延び」してしまう。
2. 小さな家の設計の難しさ
一方、小さな家(20坪以下、特に10坪前後の「マイクロハウス」など)は、スペースの制約があるため、いかに無駄を省きながら快適な生活空間を作るかが大きな課題になります。
(1) 限られた空間での機能性
- すべての生活機能をコンパクトにまとめる必要があるため、無駄なスペースを一切つくらない設計力が求められる。
- たとえば、キッチン・ダイニング・リビングを一体化する、収納を壁や床下に組み込む、可動家具を活用するなど、空間を最大限に活かす工夫が必要。
(2) 狭さを感じさせない工夫
- 開放感を生む設計が非常に重要。具体的には:
- 天井を高くしてロフトを設ける
- 窓の配置を工夫し、視線が抜ける設計にする
- 収納を壁面に埋め込む
- 必要なときだけ使える「折りたたみ家具」や「隠す収納」
- 照明の工夫も必須で、ダウンライトや間接照明を活用し、広く感じるように設計する。
(3) 家具との一体設計
- 小さな家では家具のサイズが設計と直結するため、標準的な既製品の家具を置くだけでは使い勝手が悪くなる。
- 造作家具(ビルトイン収納、折りたたみベッド、可動棚など)を間取りと一体で設計する必要があり、その分設計の難易度が上がる。
(4) 配管や設備の最適化
- 水回りの配置が特に重要で、無駄に配管が長くならないようにまとめる必要がある。
- 小さな家では洗濯機、キッチン、浴室、トイレをどう配置するかが生活のしやすさに大きく影響する。
3. どちらがどのくらい難しいか?
大きな家の設計の難しさ:★★★☆☆(3/5)
- 課題は多いが、解決策の選択肢も多いため、経験豊富な設計者であれば比較的コントロールしやすい。
- ただし、住む人のライフスタイルや動線の整理、構造・設備の整合性、デザインの統一感を取るのが難しい。
小さな家の設計の難しさ:★★★★☆(4/5)
- 限られたスペースにすべての機能を収めつつ、快適性を損なわないことが最大の課題。
- 「設計の引き算」が求められ、余計なものを省きながら機能性とデザインを両立させるスキルが必要。
- 失敗すると住み心地が極端に悪くなるため、より慎重な設計が求められる。
4. まとめ
大きな家は「整理の難しさ」、小さな家は「最適化の難しさ」がある。
どちらも難易度は高いが、特に小さな家は失敗すると住みにくくなるリスクが大きいため、より高度な設計技術が求められる。
特に、ユーザーが手掛ける YOROKOBiのようなコンパクトハウスの設計 は、機能性と快適性を両立させる難易度が高く、従来の大きな家とは異なるスキルが必要になります。