2025年10月6日
住宅完成見学会で「本当に見るべきポイント」
― 家の本質と、人の信頼を見抜くために ―
住宅の完成見学会は、いわば「住宅会社の通信簿」。
チラシやパンフレットではわからない“本当の姿”を、体感できる絶好の機会です。
しかし、多くの方が「間取り」や「デザイン」だけに目を奪われ、
本質である「性能」「施工力」「信頼性」を見逃してしまいます。
ここでは、見学会で確認すべき建物の重要ポイント、
そして説明してくれる担当者の信頼を見極めるポイント、
さらに質問すべき項目リストを、実践的に解説します。
■ 1. 建物そのものを見極める ― 「目に見えない部分」を感じ取る
見学会で最初に意識すべきは、「見える部分」より“見えにくい部分”です。
家の価値はデザインではなく、性能・施工精度・思想に宿ります。
🔹見学時に必ず確認すべき10項目
| 見るポイント | 注目すべき点 | チェックのコツ |
|---|---|---|
| ① 室温・体感 | 玄関・LDK・寝室で温度差が少ないか | 冬でも“ひんやり”を感じなければ断熱性能◎ |
| ② 静けさ | 外の車の音・床の足音 | 音の伝わり方は施工精度のバロメータ |
| ③ 採光と風 | 窓の高さ・方角・風の抜け | 光と風が“自然に”入っているか |
| ④ 断熱ライン | 窓の性能(樹脂サッシか、複層か) | ガラス面に手を当てて冷気を感じるか |
| ⑤ 換気 | 換気口や吹出口の配置 | 給気と排気のバランスを説明できるか |
| ⑥ コンセント位置 | 生活導線に沿っているか | スマホ充電や掃除機動線を想像してみる |
| ⑦ 収納計画 | 収納率(12〜15%が理想) | 扉の開き方・奥行きを確認 |
| ⑧ 隙間の処理 | 建具の納まり・巾木・天井際 | 現場の丁寧さは“仕上がりの隙”に現れる |
| ⑨ 空気の質 | におい・湿度・ホコリ感 | 換気・調湿性能の体感ポイント |
| ⑩ 玄関〜LDKの流れ | 温度ムラ・段差・照明計画 | 家族動線の自然さを感じ取る |
ポイント:
デザインよりも“空気感”を感じてください。
冬の見学なら「暖房の設定温度」、夏なら「エアコンの稼働台数」を必ず聞きましょう。
それが性能の真実です。
■ 2. 「説明してくれる人」の信頼性を見極める
家づくりは「誰とつくるか」で8割が決まります。
見学会で説明してくれる担当者は、あなたの未来のパートナー候補。
だからこそ、“人”を見抜く目が必要です。
🔹信頼できる担当者の特徴
| 観察ポイント | 信頼できる人 | 信頼できない人 |
|---|---|---|
| 話し方 | 専門用語をかみ砕いて説明してくれる | 難しい言葉を並べて煙に巻く |
| 質問対応 | すぐ答えず、図や現場写真で根拠を示す | 「大丈夫です」「標準です」で済ませる |
| 態度 | メモを取りながら聞き、次回に活かそうとする | 聞き流して他の来場者に気を取られる |
| 現場理解 | 「この家の断熱材は~」「気密測定値は~」など具体的 | 「たぶん~」「うちの仕様は全部同じです」 |
| 会話の焦点 | 「暮らし方」「将来の変化」に関心を持つ | 「価格」「キャンペーン」を強調する |
| 謙虚さ | 他社との比較も公平に答える | 他社を悪く言う |
信頼とは、“自分たちの不安を一緒に考えてくれる姿勢”から生まれます。
家を“売る”人ではなく、“共に設計する”人を選びましょう。
■ 3. 見学会で「必ず聞くべき質問」リスト
見学中にどんな質問をすればよいか迷う方も多いですが、
実は「いい質問」をするだけで、その会社の“本質”がわかります。
🔹性能・構造に関する質問
- この家の断熱等級・UA値はどのくらいですか?(補助金対象住宅か?)
- 耐震等級はいくつですか?認定書を取得していますか?
- 断熱材やサッシのメーカーと性能を教えてください。
- 実際にこの家でエアコンは何台で全館快適ですか?
🔹設計・暮らしに関する質問
- この間取りを設計したときに、どんな暮らし方を想定されましたか?
- 家事や収納の動線は、どんな工夫がありますか?
- 将来リフォームや間仕切り変更は容易にできますか?
- 実際に住まわれる方はどんなご家族構成ですか?(実例を聞く)
🔹コスト・維持管理に関する質問
- この家の建築費には何が含まれていますか?(外構・諸経費)
- 光熱費の目安はいくらくらいですか?
- メンテナンス周期と費用の目安を教えてください。
- アフター点検は何年ごとに行っていますか?
🔹理念・姿勢に関する質問
- この会社が家づくりで一番大切にしていることは何ですか?
- なぜこの仕様を標準にしているのですか?(理念の反映)
- OB施主の家を見学できますか?(顧客との関係性)
■ 4. 信頼できる会社は「数字」より「根拠」を持っている
見学会で担当者が“すぐに数字を言える”よりも、
その数字を“なぜそうなったか”説明できることが大切です。
たとえば:
「UA値は0.46です」よりも、
「この地域の冬の平均外気温と冷暖房負荷を考え、この断熱構成で0.46を実測しています」
と言える会社は、本当に家づくりを理解しています。
■ 5. 最後に ― 見学会は“体感”と“信頼”を確かめる場
完成見学会で見えるのは、「家の完成度」と「会社の人格」です。
- 温度差のない家は、施工精度が高い。
- 匂いのしない家は、換気計画が正しい。
- 納まりが美しい家は、職人の誠意がある。
- 丁寧に説明する担当者は、理念を持っている。
見学会とは、会社の「理念」と「実践」が交わる場所」です。
ぜひ、パンフレットではなく“空気感”と“人の誠実さ”で判断してください。
<アドバイス>
見学会は、「買うか決める場所」ではありません。
“信頼できる人と出会う場所”です。
家づくりは技術ではなく、共感と信頼で進めるもの。
見学会で感じた“心地よさ”と“納得感”を大切にしてください。