HEAD BLOG代表 窪田のブログ

2025年8月29日

『素材選び』

家づくりは、人生の大きな節目であり、未来の暮らしを形づくる大切なプロセスです。その中でも、家の印象や住み心地を大きく左右するのが「素材選び」です。単にデザインや機能性だけでなく、その素材が持つ「味わい」や「経年変化」という視点を持つことで、家は単なる住まいを超え、家族の歴史を刻む唯一無二の存在へと変わっていきます。


素材が語る「今」と「未来」の物語

多くの人が家を建てる際、日々の快適さを求めて「お手入れのしやすさ」や「傷つきにくさ」といった機能性を重視します。現代の建材メーカーは、そうしたニーズに応えるべく、汚れがつきにくく、掃除がしやすい素材を日々開発しています。本物の質感に限りなく近づけたフローリングや、豊富なカラーバリエーションを持つ壁材など、技術の進歩は目覚ましいものがあります。これらは、まさに「」の暮らしを快適にするための選択肢と言えるでしょう。

一方で、時が経つにつれて深みを増していく「本物の素材」を好む人も少なくありません。例えば、無垢の木や漆喰、天然石といった自然素材は、その特性ゆえに傷がついたり、色が変わったりすることがあります。しかし、その一つひとつの変化が、家族が過ごした時間や思い出を刻む「味わい」となり、家全体に豊かな表情を与えてくれます。新築の時に完璧だった家が、10年後、30年後、50年後と時間とともに古びていくのではなく、「美しく成熟していく」ような世界観を望むのであれば、この「経年美」を意識した素材選びが重要になります。


「味わい」がもたらす唯一無二の価値

自然素材、特に木をふんだんに使った家は、単に見た目が美しいだけでなく、私たちに多くの恵みをもたらしてくれます。木は、室内の湿度を自然に調整し、空気を浄化する力を持っています。木の香りは心を落ち着かせ、視覚的にも安らぎを与えてくれます。素足で歩いた時の心地よい感触は、最先端の技術では生み出せない、本物の素材だからこそ感じられるものです。

日本の古い家屋や古民家が海外の人々から高く評価されるのは、こうした「本物の素材」が持つ唯一無二の魅力があるからです。何百年も受け継がれてきた家屋は、単なる古い建物ではなく、その時代を生きた人々の暮らしや文化、そして時間の重みを物語る存在です。そうした「本物の素材」が醸し出す深い味わいや重厚感は、たとえ最新の技術をもってしても簡単には再現できません。


未来を見据えた素材選び

家づくりは、建てた時がゴールではありません。その家とこれから何十年も向き合い、どんな風に暮らしていきたいのか、未来を想像することが大切です。

  • 住み続ける家:家族の成長とともに変化する暮らしに合わせて、素材の表情も豊かに変わっていく家。傷一つひとつが思い出となり、愛着を育んでくれる。
  • 流通する家:将来的に第三者に貸したり、売却したりすることを考えている場合、時が経っても価値が下がりにくい家であることが重要です。単に新しいだけでなく、魅力や価値を感じてもらえる家は、次の世代へと「住み継がれていく」可能性を秘めています。
  • 用途を変える家:将来的にお店や事務所、宿泊施設として活用することを想定するなら、その用途に合わせた素材選びが求められます。時間の経過とともに風合いを増す素材は、古民家カフェのように独特の魅力を生み出し、人々を惹きつける力になります。

家づくりは、今だけでなく、未来の自分や、もしかしたらその家を引き継ぐかもしれない誰かのことを考える機会でもあります。どんな素材を選ぶかによって、その家の未来の価値は大きく変わります。

ぜひ、今一度、自分自身と向き合い、どんな素材に囲まれて生きていきたいのか、そしてその家が将来どのような存在であってほしいのか、じっくりと想像してみてください。その答えの中に、あなたの理想の家づくりのヒントが隠されているはずです。

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