HEAD BLOG代表 窪田のブログ
2025年8月5日
日本と北欧の建築
「日本の引き算の建築」と「北欧の人間哲学による建築」の共通点と違い、そしてそれらが融合して生まれた「ジャパンディ(Japandi)」という新たな美の概念について、魅力的にかつわかりやすく解説します。
◾️はじめに:空間に“語らせる”という発想
私たちが心地よいと感じる空間には、実は“足し算”ではなく“引き算”の思想が働いています。
モノを増やすことで豊かになるのではなく、「何を置かないか」「何を残すか」で空間の本質を引き出す──。
それは日本の美学「引き算の美」と、北欧の「人間のための暮らしの哲学」が交差する地点にあります。
◾️日本の「引き算建築」──“無”に美を見出す文化
● 特徴
- 禅の精神に由来する「侘び寂び」や「間(ま)」を重視。
- 素材の質感、光と影、余白が空間の美をつくる。
- 静寂や不完全さ、儚さを美とする価値観。
● 代表的要素
- 障子・襖:仕切りながらも空間の連続性を保つ。
- 土壁・木・和紙:自然素材の風合いを活かす。
- 平屋建築:空との距離、自然との一体感。
● 哲学的背景
- 「無こそ豊かさ」
- 「用の美」:機能がそのまま美につながる。
- 「減らすことで本質が現れる」
◾️北欧の建築哲学──“人間中心”の心地よさをデザイン
● 特徴
- 厳しい自然環境(長い冬・寒冷な気候)から生まれた“内なる豊かさ”。
- 機能性と快適性、そして温もりあるデザインが重視される。
- 自然光の取り込みや、自然素材の活用が基本。
● 代表的要素
- 木材を基調としたシンプルモダンなインテリア。
- フォルムと機能が融合した家具(アルネ・ヤコブセン、アルヴァ・アールトなど)。
- 「ヒュッゲ(HYGGE)」:日常の中にある安らぎと幸せを大切にする暮らし方。
● 哲学的背景
- 「人が主役であること」
- 「居心地=生活の質」
- 「幸せはデザインできる」
◾️共通点──“本質へのまなざし”
日本の建築 | 北欧の建築 |
---|---|
自然と共にある | 自然を取り入れる |
減らす美学 | 選び抜く機能美 |
静寂・余白 | 安らぎ・快適さ |
哲学に根ざす | 暮らしに根ざす |
共に共通しているのは、「余計なものを削ぎ落とすことで、暮らしの本質が見えてくる」という考え方です。
空間は“飾るもの”ではなく、“感じるもの”として設計されます。
◾️違い──“静かなる詩”と“あたたかな物語”
日本 | 北欧 |
---|---|
精神性(禅、無常、間)を重視 | 実用性・生活快適性を重視 |
余白や抽象的な空気感 | 温かみや具体的な快適さ |
寂しさの中の美しさ | 幸せの中の心地よさ |
つまり、日本の美は「引き算=無の中にある精神性」、
北欧の美は「引き算=人間の幸せを引き出す設計」なのです。
◾️そして、融合へ──「ジャパンディ」という新しい美
● Japandi(ジャパンディ)とは?
日本(Japan)×スカンジナビア(Scandi)を掛け合わせた造語。
日本のミニマリズムと、北欧の機能性と温もりを融合した、21世紀の新たなインテリア・建築美学です。
● Japandiの魅力
- ミニマルで洗練された空間でありながら、決して冷たくない。
- 自然素材、素朴な色合い、曲線と直線のバランス。
- 精神的な静けさ × 暮らしのあたたかさ。
● Japandiに見る未来の住宅
- 家は「見せるもの」から「感じるもの」へ。
- 人生の“静”と“動”が共存する場所。
- 空間そのものが人生の質を上げる装置になる。
◾️結び──“足りない”からこそ、満たされる
ジャパンディという美は、
「満たされることを求めすぎた現代」への静かな問いかけでもあります。
家に帰るたびに心が落ち着く。
モノが少ないのに、なぜか心が満たされる。
その秘密は、「日本の引き算」と「北欧の人間中心哲学」が出会ったからこそ生まれた、“静かなる豊かさ”にあります。