2025年6月26日
「これからの家づくり」に必要な新しい基準とは
住宅業界に長く身を置く中で、私は強く感じています。「家づくりの基準が、いま大きく変わろうとしている」ということを。
これまでは、自分や家族の満足を最優先にした「自己満足のための家づくり」が主流でした。広さ・設備・デザイン。誰かに見せたくなる家、こだわりを詰め込んだ家。しかし、そうした家が40年後、どのような姿になっているか。そこに暮らしていた人が年を取り、子どもたちは巣立ち、『空き家』になったとき——その家は「貸せる」「売れる」家になっているでしょうか?
いま、日本各地で『空き家問題』が深刻化しています。家が資産どころか負債になってしまう。そんな事例を数えきれないほど見てきました。
これからの時代に必要な家づくりの基準は、「将来、貸せる」「売れる」そして「空き家にならない」こと。この三拍子が揃って初めて、本当に価値ある家といえるのではないでしょうか。
流通しない家は、誰のためにもならない
住宅ローンを組み、土地建物で4,000万円超の支払いを40年払い続ける。それ自体は悪いことではありません。問題は、その家が将来「誰にも借りられず」「誰にも買われない」住み継がれない家になってしまう可能性があるということです。
売れない。貸せない。活かせない。つまり“流通しない家”です。
欧米では、住宅は「流通させるもの」という考え方が根底にありその価値観が定着しています。家は人生の資産として、次の世代にも使ってもらう。住み継ぐことが前提です。
日本の住宅文化は、どちらかというと“建てては壊す”使い捨て型。だから「一代限りの家」が多く、家が大きくなりすぎているから、結果が『空き家問題』に発展しています。
流通する家とは、どんな家か?
では、どうすれば「流通する家」がつくれるのか。私は、次の6つのポイントが重要だと考えています。
- ちょうど良い暮らしやすいサイズ
大きすぎる家は、光熱費も掃除もメンテナンスも負担が大きい。これからの時代は、1〜4人の暮らしに合う“ちょうど良いコンパクトサイズ”が主流になるでしょう。 - シンプルで普遍的な間取り
家族構成が変わっても使いやすい、癖のない間取りが重要です。奇抜な間取りは、流行が去ると敬遠されますし、誰もが暮らしやすいとは言えないかもしれません。 - 長持ちする構造と性能
断熱性・耐震性・メンテナンス性が高いことは、貸す・売る際の大きなアドバンテージです。性能は“信用”です。 - 外観・内装は流行を追いすぎない
普遍的で飽きのこないシンプルなデザインこそ、時代を超えて評価されます。時間とともに美しく古びていく素材も魅力です。 - 立地と用途の多様性
将来、民泊や二拠点居住、シェアハウス、オフィスなど多様な使い方が可能な立地・間取りであることも大事です。 - メンテナンスしやすい設計
平屋のように、配管、設備、外壁などに手が届きやすく、将来の修繕がしやすい家は、長く活用されます。
これらを満たすことで、初めて「貸せる家」「売れる家」「活かせる家」になると私は考えています。
小さくて“チープではない”家を
ここで注意してほしいのは、「小さい家」こそが「価値ある家」であることが多くの皆さんが認知され理解されてきました。小さいからこそ、高性能で、デザイン性が高く、使い勝手が良い、優れた間取りの小さな家こそ“選ばれる家”になります。
ただ、コストだけを優先してつくられた“チープな小さな家”は、不人気になっていたら「貸すこと」も「売ること」も難しく、結果的に『空き家』になってしまう可能性が高まります。安物買いの銭失い、になってはいけません。
新築時から「将来の活用」を見据える
人生100年時代。これからの家づくりは、30年・40年先の未来を見据えた計画が必要です。
今は元気でも、10年後はどうでしょう?
子どもたちは巣立った後、その家はどうしますか?
自分が住まなくなった家が、誰かの暮らしに役立つように——そんな想像力こそが、これからの家づくりに求められているのです。つまり、建てるときに「貸す」「活かす」「売る」を考えて家づくりに調整できたら未来は大きく変わります。
住宅産業が変われば、社会が変わる
住宅は人の暮らしの器であると同時に、地域の資産でもあります。「流通する家」が増えれば、『空き家』も減り、地域に人が戻り、暮らしが循環する方向に進みます。
家を建てる人も、つくる人も、「30年後に感謝される家づくり」を意識すること。それができれば、日本の住宅文化は、よりよい方向へと変わっていくと信じています。
一度、じっくりと“いま”と“30年後以降の未来”を見つめてください。
それはきっと、あなたの人生を守る“本当に価値のある家づくり”への第一歩となるはずです。
日本の家も欧米のような価値観で家づくりをすることで、日本の住宅文化は、お金を産む家づくりの方向に進むことができたら『幸せ』を実感し、将来負の遺産をどうしようと悩むこともなくなります。また、残された承継する人にも負の資産を背負わせることになります。
だからこそ、家を建てるときは『流通できる家は自身を助ける家』となるでしょう。
気づいている人だけが将来笑顔で人生を送ることができます。