2025年5月1日
家の向きを考える・・・
家の「向き」は南だけじゃない。暮らしの視点から考える住まいの配置
住まいを建てるとき、「リビングは南向きが良い」とよく言われます。たしかに、南向きのリビングは一日を通して太陽の光を取り込みやすく、明るく快適な空間が生まれます。そのため、南向きを基本とした間取りが長年の常識として受け入れられてきました。
しかし、本当に「南向き」でなければいけないのでしょうか?実は、それはあくまで“ひとつの選択肢”に過ぎません。たとえば、周囲に高い建物があって日差しが遮られる場合、南向きにしても思ったような採光が得られないことがあります。一方で、東側に開けた視界や美しい景観が広がっている土地であれば、朝日が入る東向きのリビングは、清々しい一日を始めるのにぴったりです。
実際、マンションを見上げてみると、東西南北それぞれの方向にバルコニーや窓が向いており、多様な住まい方があることが分かります。マンションは周囲より高い位置に建っていることが多く、周囲の影響を受けにくいため、どの向きでも一定の快適性を確保できる設計がなされているのです。
一戸建ての住宅でも同じように、周辺環境や土地の特性、家族の暮らし方をしっかりと観察・理解することで、「この土地は条件が悪い」と思い込んでしまうのはもったいないことです。たとえば、西側に開けた景色があるなら、夕暮れ時の光を楽しめる設計が可能ですし、北側に静かな庭を設けることで、穏やかな時間を過ごせる空間づくりもできます。
大切なのは、「光」や「風」、「景色」や「プライバシー」といった要素を丁寧に読み取り、それに合わせて住まいの顔をどこに向けるのかを考えること。土地の良さは、向きに縛られずに探せば、必ず見つかります。
「南向き=正解」という固定観念にとらわれず、自分たちの暮らしに合った“心地よい向き”を見つけること。それが、より豊かな住まいづくりへの第一歩になるのです。