2025年5月22日
2025年4月から建築基準法の大改正で、どんな変化がなされたのか?
2025年4月に施行された建築基準法の改正により、これまで「4号特例」として確認申請が簡略化されていた主に木造2階建て以下の住宅についても、全国一律で構造に関する審査が必要となりました。この改正は、住宅の安全性を高める目的で実施されましたが、実務上の影響は多方面に及んでいます。これから新築住宅を計画されている方に向けて、どのような変化があり、何に注意すべきか、また完成までのスケジュールをどう考えるべきか、わかりやすくお伝えいたします。
■ 建築基準法改正の背景と概要
これまでの「4号特例」では、木造2階建て以下の戸建て住宅について、建築士による設計であれば建築確認申請の際に構造図や構造計算書などの詳細な資料の提出が免除されていました。しかし、構造に関する不備や安全性の問題が一部で発生していたことから、建築主や住まい手の安全性を確保するために、今回の法改正ではすべての住宅に対して構造審査が行われることになりました。
■ 実務上の変化と影響
1. 確認申請の手間と時間の増加
構造図や構造計算の提出が必須となったことで、確認申請の準備にかかる時間が長くなり、提出後も審査に時間を要するようになりました。従来であれば数日〜1週間程度で許可が下りていたケースでも、現在は2週間〜1か月程度かかることも珍しくありません。
2. 着工時期の遅延
確認済証が交付されるまでは工事を始めることができません。審査が長引けば長引くほど、基礎工事や大工工事、各種専門業者のスケジューリングが立てづらくなり、工期全体の見通しが不明瞭になります。繁忙期や年末年始を挟むと、さらに遅れるリスクもあります。
3. 設計図書の精度が問われる
確認申請で構造審査が入る以上、構造計算や基礎伏図、梁伏図、金物図などの精度が問われます。設計段階から構造設計者との連携が不可欠となり、経験の浅い設計者や工務店にとっては難易度が上がっています。
■ 唯一の例外:木造平屋建て 200㎡以下
今回の法改正でも、「木造平屋建て・延床面積200㎡以下」の住宅については、従来通り構造審査の簡略化(4号特例)が認められています。そのため、この条件を満たす住宅であれば、設計・確認申請・工事着工までの流れは比較的スムーズです。
とはいえ、審査機関によっては書類の形式や精度に厳格な対応が求められることもあり、全体的に設計の質と情報の正確さが重視されるようになっています。
■ 住まい計画中の方へのアドバイス
これから家づくりを始める方には、次の点を踏まえて進めることをおすすめします。
1. 余裕のあるスケジュールを
設計から着工まで、従来より1〜2か月長くかかる可能性を見込んで計画を立てましょう。たとえば「〇月には引越ししたい」と考える場合、少なくともその6〜7か月前から設計をスタートさせるのが理想です。
2. 建築士・工務店選びが重要に
構造までしっかりと設計・対応できる経験豊富な建築士や工務店に依頼することが、スムーズな確認申請と着工のカギになります。法改正への対応実績があるかどうかを確認しましょう。
3. 途中での仕様変更は最小限に
構造審査が厳格になった今、途中での仕様変更は確認申請の再提出や再審査の対象となる可能性があります。結果として工期が延び、コストもかさむため、最初の段階でしっかりとプランを固めることが重要です。
4. 平屋住宅という選択肢も
200㎡以下の平屋は、確認申請の負担が比較的軽いため、スケジュール的にも安心できる選択肢です。高齢者や小さなお子様がいる家庭にも人気が高く、バリアフリー性やメンテナンスのしやすさなどの点でも優れています。
■ 最後に
今回の法改正は、すべての人にとって「より安全な住まい」を提供するための前向きなステップです。その一方で、これまでと比べて家づくりに必要な時間と手間は確実に増しています。だからこそ、早めの準備と専門家との密な連携がこれまで以上に重要になります。
もし「いつ完成するのか」「どんな段取りで進めればよいのか」が不安な場合は、遠慮なく建築士や工務店にご相談ください。私たちも、ひとつひとつ丁寧に説明しながら、安心して住まいづくりを進めていただけるようサポートいたします。夢のマイホーム実現に向けて、共に一歩ずつ進んでいきましょう。