HEAD BLOG代表 窪田のブログ

2025年5月20日

GX住宅の補助金制度と「認定長期優良住宅」──どちらを選ぶべき?

これから住宅を建てようと考えている皆さまにとって、気になることの一つが「どのくらいの補助金が受けられるのか」ではないでしょうか。最近よく耳にするのが「GX住宅」というキーワードです。GX住宅とは、「グリーントランスフォーメーション(GX)」の名の通り、環境に配慮した高性能な住宅を対象とした制度で、一定の性能基準を満たす住宅には最大160万円の補助金が支給される制度です。

この金額だけを見ると、「ぜひこの制度を利用したい」と思う方も多いかもしれません。しかし、ここで注意しておきたい点があります。それは地域によって求められる住宅性能の基準が異なるということです。例えば、長野県のような寒冷地と、九州などの比較的温暖な地域では、断熱性能などの要求水準がまったく異なります。つまり、同じGX住宅であっても、寒い地域ほど高い性能が求められ、その分コストもかかるというわけです。

具体的には、GX住宅の補助金を得るためには、断熱性能等級6以上、一次エネルギー消費量等級6以上、かつ気密性能(C値)0.5以下といった厳しい条件が課される場合があります。これを満たすためには、窓や断熱材、換気システムなどにおいて高性能な仕様を採用する必要があり、結果として建築コストが大幅に上がる可能性があるのです。

たとえば160万円の補助金を得るために、断熱性能の向上や気密性の強化などに300万円〜400万円の追加投資が必要になるケースも珍しくありません。そうなると、「補助金をもらうために多額のコストをかけて、本当に元が取れるのだろうか?」と感じるのも無理はありません。

住宅は長く住み続ける場所ですから、ランニングコストが低く、快適な暮らしができることは非常に重要です。たしかに高性能住宅はエネルギーコストを抑えることができますが、その初期投資を回収できるまでには10年、20年といった長い年月がかかる可能性もあります。ライフスタイルや住宅にかけられる予算を考えたとき、「そこまでの性能を本当に必要としているか?」を一度冷静に考える必要があります。

そこで私たちがおすすめしたいのが、「認定長期優良住宅」という選択肢です。

認定長期優良住宅とは、住宅の構造や設備、劣化対策、維持管理のしやすさ、省エネ性など、長期にわたって良好な状態で使用できることを国が認定する住宅です。この認定を受けることで、80万円の補助金を受けることができ、かつ住宅ローンの金利優遇や固定資産税の軽減措置などのメリットも得られます。

長期優良住宅は、GX住宅ほどの超高性能を求められるわけではないため、過度なコストをかけずに性能の高い住宅を実現することが可能です。特に寒冷地においては、GX仕様を目指すよりも、バランスよく快適性とコストの折り合いをつけられる長期優良住宅の方が現実的であると感じています。

また、長期優良住宅は、中古住宅市場でも評価されやすく、将来の売却時にも有利に働くというメリットがあります。「快適で住みやすく、ランニングコストも適度に抑えられ、将来的な資産価値も維持しやすい」──そんな住宅こそ、これからの時代にふさわしいのではないでしょうか。

もちろん、GX住宅にはGX住宅の価値があります。より高性能な住環境を追求したい方、光熱費を徹底的に削減したい方には適しているかもしれません。しかし、補助金の金額だけにとらわれて、無理をして高性能を目指すよりも、自分たちの暮らしに合った性能を選ぶことが大切です。

最終的には、「その住宅にどんな暮らしをしたいのか」「何を大切にしたいのか」によって最適な選択肢は変わってきます。補助金はあくまで“おまけ”です。私たちは、快適で無理のない住まいづくりを第一に考えたいと願っています。

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